乗鞍高原バットハウス

乗鞍高原バットハウスとはどういったものか

バットハウスと聞いても、いったいどんなものか想像つきませんよね。ここでは、乗鞍高原のバットハウスという、コウモリの人工ねぐらの仕組みについて解説します。

長野県松本市の乗鞍高原に建てられたクビワコウモリのバットハウス。保護活動の拠点となっている木造の高床式構造物
長野県松本市・乗鞍高原に設置されたバットハウス。クビワコウモリの保護と繁殖を目的とした人工ねぐら

構造と設計

「乗鞍高原バットハウス」は木造2階建てで、1階は物置兼研究室、2階がコウモリの住処となるよう設計されています。コウモリが利用しやすいよう、外壁に2個の巣箱が取り付けられ、外壁と内壁の隙間、小屋の屋根裏部分、小屋の天井部分などに、コウモリが住める特別な空間や隙間、出入口が組み込まれています。

建設と協力

このバットハウスは、コウモリ研究者や「クビワコウモリを守る会」の熱心な働きかけにより、地元安曇村(当時)、長野県、環境庁中部地区国立公園・野生生物事務所、アムウェイ・ネイチャーセンターなど多くの関係機関や団体、地元住民の協力と助成金(アムウェイ・ネイチャーセンター第7回環境基金助成金)を得て、1996年10月27日に完成しました。

誘致と利用の成功

完成当初は木の香りが強く、コウモリがすぐに利用しない可能性も懸念されましたが、事前に採取したコウモリの糞を水に溶かしてバットハウス各所に塗る「匂いつけ作業」を行うことで、早期の誘致が試みられました。その結果、1997年7月20日には数頭、25日には20数頭のクビワコウモリの利用が確認され、日本で2例目のバットハウスとして初年度からの利用は「快挙」と評価されました。1997年11月の内部調査では、壁の内部だけでなく巣箱からもコウモリの糞(グアノ)が確認されています。1998年には、最高で51頭のコウモリの利用が確認されています。

研究・保護拠点としての役割

バットハウスは、クビワコウモリの寿命や回帰といった生態調査における標識個体の放獣場所としても利用され、コウモリが施設の場所や内部構造を記憶し、再訪するきっかけとなる可能性も考えられています。また、クビワコウモリ以外のコウモリ、特に樹洞棲コウモリの生息環境喪失への代償措置研究にも寄与すると期待されています。