乗鞍の短い夏に特別な想いを抱くように
クビワコウモリたちは繁殖のため
日本で唯一この乗鞍高原へ帰ってきます。
長野県松本市にある乗鞍高原には、繁殖の場がこの地だけに限られる小さなコウモリ——クビワコウモリがいます。
彼らの生態は謎に包まれていますが、その数は減少傾向にあります。
私たちは、この存在を知っていただくことが、クビワコウモリの保護につながると考えています。

クビワコウモリを守る会とは
私たち「クビワコウモリを守る会」は、長野県松本市の乗鞍高原を拠点に、クビワコウモリの保護と調査を続けている市民団体です。
設立は1995年。乗鞍高原で、民家の屋根裏にすむコウモリの出産・子育ての様子が発見されたことをきっかけに、専門家と地域の有志が集まり、活動が始まりました。

クビワコウモリという小さなコウモリ
クビワコウモリは、体長およそ5cmから6cm、体重はおよそ10gほどの小さなコウモリです。彼らは夜に活動し、主に飛ぶ昆虫を捕らえて生きています。
初夏に乗鞍高原へ飛来し、夏の間は家屋の隙間や天井裏などで子育てを行います。
そして、秋が深まる頃にはこの地を離れていきますが、冬の過ごし方やオスの行動など、詳しい生態にはまだ分かっていない点が多くあります。

クビワコウモリと乗鞍高原の物語
暑い夏の訪れを待ちわびるように、クビワコウモリたちは今年もまた、初夏になるとこの乗鞍高原へと舞い戻ってきます。
何年も、何世代も繰り返されてきた夏の約束。
まるで、短い夏を呼び起こすかのように、彼らはこの地で愛おしい我が子を育て、温かい巣立ちの時を迎えます。
そして、冬の足音が聞こえ始める頃、静かに、また次の夏を期して去っていくのです。

クビワという名前の由来
クビワコウモリの名前は、その体の特徴に由来しています。彼らの首元には、金色の輪のように見える特徴的な毛色があります。
この毛色は、他のコウモリにはあまり見られない、この種ならではの姿です。光の当たり方によっては、その金色が静かに輝いて見えることがあるのです。

クビワコウモリの保護活動をしている理由
その上で、なぜクビワコウモリを守るべきなのかをお伝えします。

もしこの環境が損なわれれば、繁殖地の減少は、そのまま彼らの個体数減少へとつながります。この写真は、繁殖を示すメスです。

個体数は限られており、生息する自然林減少やねぐらの消失など、人間活動が招いた主な要因です。彼らの日本での安定した生息には、さらなる働きかけが必要です。

彼らを守る活動は、乗鞍高原の自然全体を守り、その豊かさを次世代へ伝えることにつながります。
クビワコウモリを守る会の活動
バットハウスの管理と保全
クビワコウモリの繁殖活動を守るためには、ねぐら(繁殖場所)の確保が必要でした。繁殖場所の減少=クビワコウモリの減少につながるからです。
そこで、自治体や関係者の協力の元、1996年に人工のねぐら(通称バットハウス)が建設されました。そして、昨年2024年に全面改修を終え、新たなシーズンを迎えることができました。

観察会の実施
クビワコウモリを知っていただくことが保護の第一歩だと考え、一般の参加者の皆様を交えて、毎年2回、観察会を開催しています。これは個体数のカウントや行動把握などクビワコウモリの研究活動の一環でもあります。

乗鞍高原の皆さまへ:感謝を込めて
クビワコウモリがこの乗鞍高原で命を繋ぎ、生き続けてこられたのは、他ならぬこの地で暮らし、この自然を慈しんできた地元の方々の長年にわたるご尽力と、温かい眼差しがあってこそです。
乗鞍高原で暮らす皆様、観光業に携わる皆様の、自然への深い愛情とクビワコウモリへのご理解に、心より感謝申し上げます。
私たちは、今後も地域の皆様との確かな絆を何よりも大切にしながら、活動を続けてまいりたいと思います。

訪れる観光客の皆さまへ
クビワコウモリの人工ねぐら「バットハウス」は、乗鞍自然保護センターのすぐ横にあります。コウモリたちは、昼間はひっそりと寝ていますので、どうかやさしく見守ってあげてください。
あなたがまた、この美しい乗鞍高原へ帰ってきてくださることを願うように。私たちもまた、クビワコウモリたちが、今年も変わらずにこの地へ舞い戻ってきてくれることを、心から祈っています。
来年も、この豊かな自然と、そこで懸命に生きる小さな命たち、そして皆様にお会いできますように。

クビワコウモリの保護の課題と支援の必要性
活動を継続するために、皆さんの支援を必要としています。

未解明な点を明らかにするための調査研究を続けています。

また、古い家屋の改修や取り壊しにより、安定したねぐらを失う問題も生じています。

クビワコウモリを守り続けるためには、より多くの人々の参加と協力が必要です。
クビワコウモリとSDGs:生物多様性から見える未来
私たち「クビワコウモリを守る会」の活動は、いくつかのSDGs(持続可能な開発目標)と深く関係しています。

その分布や移動、行動パターンは、気温や季節変動に敏感に反応します。
高地に暮らす生き物の変化を調べることは、気候変動の影響を読み解くヒントになります。

彼らの命は、森林の健全性に強く依存しています。ねぐらとなる大木や、すみかとなる屋根裏が失われれば、命の居場所も失われます。
この活動は、絶滅危惧種の保護だけでなく、森の豊かさを守る取り組みでもあります。

行政機関や研究者、地域の宿泊施設、観光関係者、そして企業の皆様と、長年にわたって協力を重ねてきました。
生き物を守るということは、同時に「人と人との協力を育てること」でもあります
ご支援のお願い
しかし、そのすべての活動は、みなさまのご支援なしには成り立ちません。このページをご覧くださったあなたの力が、未来へつながる力になります。
会員として支える
「関心を持ち続けること」も、立派な支援です。
「遠方だから」「時間がないから」と、入会をためらわれる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、観察会に参加できなくても大丈夫です。年に1回の活動報告を読んでいただき、このウェブサイトを時々みて、そっと見守っていただけるだけで――
それが、どれほど私たちの励みになっているか、言葉では言い尽くせません。
継続的な関心と支援は、この活動を続けるための礎です。
どうか、クビワコウモリの未来のために、私たちと共に歩んでいただけませんか?
▶︎ [会員制度のご案内](※リンク)
寄付で支える
クビワコウモリを守るには、「資金」が必要です。
バットハウスの維持、繁殖期の個体調査、観察会の開催…。
どれも欠かすことのできない取り組みですが、継続にはどうしても経費がかかります。
ご寄付は、調査機材の購入、印刷物の作成、人工ねぐらのメンテナンスなど、具体的な保全活動に直接使われます。
個人でも、企業でも。少額でも、大きな支えになります。
「この活動を続けてほしい」と願ってくださる皆様のお気持ちを、どうか形にさせてください。
▶︎ [ご寄付の方法はこちら](※リンク)
皆様の暖かいご支援、ご協力を今後ともよろしくお願いいたします