共同研究論文「上高地にクビワコウモリを求めて」が『コウモリ通信』第33号に掲載されました

クビワコウモリを守る会でウェブサイト運営を担当しております、山岸淳一です。

2026年3月発行の『コウモリ通信』第33号(コウモリの会発行)において、当会のメンバーが中心となり進めてきた調査成果をまとめた共同研究論文「上高地にクビワコウモリを求めて(山本輝正ほか)」が掲載されましたので、お知らせいたします。

本論文は、長野県松本市の上高地におけるクビワコウモリ(Cnephaeus japonensis)の生息実態を明らかにするために実施された、2024年度までの調査記録をまとめたものです。

調査の背景:乗鞍個体群の変動と「移動」の謎

長野県乗鞍高原では、1990年以来クビワコウモリの出産哺育群が継続的に調査されており、かつては350頭を超える個体数が確認されていました 。しかし、近年は70~80頭程度で安定した状態となっており、数年単位で見られる個体数の急増・急減は、出生や死亡だけでは説明がつかないことから、他の生息場所との間での「移動」の可能性が示唆されてきました。

この移動先を特定し、地域個体群全体の保全戦略を立てる上で、隣接する上高地は極めて重要な調査エリアでした。

2024年度調査の概要と成果

2024年度は、長野県自然保護課との共催調査(第一調査地)および当会単独の調査(第二・第三調査地)を実施しました。

  • 音声データによる生息の可能性:バットディテクターを用いた調査により、上高地の複数の地点において、クビワコウモリの音声特徴に合致するピーク周波数27.0–27.7 kHz付近のFM/QCF型音声が確認されました。
  • 確認されたコウモリ相:捕獲調査および音声調査の結果、計2科10種(過去の記録を含む)の生息が確認されました。
  • 複数種のコウモリの繁殖を確認:ヒナコウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、ニホンウサギコウモリについては、当歳獣や授乳個体が確認され、上高地がこれらの種の出産哺育の場となっていることが明らかになりました。

今後の展望と保全への意義

今回の調査ではクビワコウモリの直接捕獲には至りませんでしたが、確認された音声データは、本種が上高地を生息拠点として利用している可能性を支持するものです。

今後も、本種がパッチ状の集団が交流を持つ「メタ個体群構造」を形成しているのかなど、さらなる調査を進めていく必要があります。

当会は、今後も行政や研究者と連携し、クビワコウモリの保全活動を推進してまいります。本調査を支えてくださった関係各位に、この場を借りて深く感謝申し上げます。

文献情報

山本輝正・山岸淳一・峰下 耕・中村桃子・西岡真智子・神谷郊美・安藤陽子・辻 明子・大沢夕志・大沢啓子・山本優磨・黒江美紗子・坂口龍之介・前田康宏・金沢大樹 (2026) 上高地にクビワコウモリを求めて. コウモリ通信 (33): 17-25.


この記事の執筆者

山岸 淳一(Yamagishi Junichi)

クビワコウモリを守る会 WEB運営・編集責任者 / 野生動物保護・建築物侵入対策専門家

長野県におけるコウモリ類の生態調査および保護活動に従事。建築構造の知見を活かし、野生動物の侵入メカニズム解析と環境改善策の研究を行っています。当サイトの文責はすべて私にあります。